鍼灸の安全性を考える(プロ野球選手への鍼灸施術によるトラブルの真偽)

こんにちは、萬育堂薬房の志倉です。

 

 

皆さま、先月の9月10日に「プロ野球選手への鍼灸施術による神経麻痺の疑い」についてニュースが流れたことをご存知でしょうか?

http://www.hochi.co.jp/giants/20170910-OHT1T50101.html

(外部リンク:スポーツ告知 【巨人】球団が沢村に謝罪…施術ミスで神経麻痺)

 

 

このニュースは瞬く間に全国に広がり、鍼灸施術についての安全性や意義に対して非常に大きな衝撃を与えることとなりました。

球団所属のピッチャーが、今年の2月ごろから右肩のコンディショニングが不良となり、その後4か月以上に及ぶリハビリを実施した後にチームと合流をしました。

しかしながらコンディショニングが安定せず、調整に戻った9月に今回のニュースが流れました。

球団側の説明によると選手が不調を訴えた2月末から9月までの間、球団所属のトレーナーによって鍼施術を受けつづけていたが症状が改善せずに、疑問を抱いた球団が調査を行った結果 複数の医師らから「長胸神経:ちょうきょうしんけい麻痺の疑いがあると診断されました。

その原因は、外的要因によって発生したものと診断をして、鍼灸施術を行ったトレーナーが選手に謝罪をしました。

 

 

 

◎長胸神経とは?

長胸神経とは首から起こる神経であり、頸肩部や脇腹に伸びており下行をします。

下の画像の黄色く細い線が神経となります。

(引用元:プロメテウス解剖学 第一版 医学書院 より)

 

主に前鋸筋(ぜんきょきん)という肋骨から肩甲骨にかけて付着をしている筋肉を動かします。

肋骨と肩甲骨の距離を縮めるように収縮しますので、姿勢でいうと胸を張るような動作をイメージです。

野球における投球動作では「コッキング」の中期~後期にかけて非常に伸張・収縮をします。

スポーツにおける前鋸筋の酷使よって長胸神経が障害されることは少なくありません。

 

また、前鋸筋の浅層(浅いところ)を長胸神経が走行することから、日常生活においても痺れをきたすことがあります。

例を挙げると、長時間リュックサックを背負っていることによって首・肩を圧迫してしまい、肩や脇腹に痺れがみられることがあります。(リュックサック症候群

 

ここまでの話をまとめると・・・

・今回のトラブルは「長胸神経麻痺」である

・球団側の調査によると長胸神経麻痺はトレーナーによる継続的な鍼灸施術が原因であるとされている

・長胸神経は浅層を走行しているため、野球の投球動作や日常生活動作で圧迫してしまうことがある

以上となります。

 

 

◎鍼灸業界の対応について

今回のトラブルに関して鍼灸師である私としては、情報が開示されないまま鍼灸施術が原因であるとされ報道されてしまったことに疑問を感じます。

 

一体、球団所属のトレーナーはどういった鍼を使用し、施術を行い、経過観察をしたのか?

所属トレーナーが投手に対して謝罪をするに至る、確証が挙がっているのか?

 

こういった事態を受けて私が所属する全日本鍼灸学会も球団に対して公開質問状を提出しています。

https://ssl.jsam.jp/contents.php/010000euvO2g/

(外部リンク:公益社団法人 全日本鍼灸学会 プロ野球選手への鍼治療による長胸神経麻痺に関する報道について)

 

現在、我々は球団の回答を待っている状態です。

このような状況がつづいてしまうと鍼灸の安全性について国民から信頼を失ってしまう事態となってしまいます。

 

 

◎私が思う疑問点について

①コンディショニングの不調を発症後と現在の状態についての差

当該選手が一体どの場面で明確に麻痺や障害を訴えたかについてです。

様々な記事をみても今年2月の段階における症状を記載したものはありませんでした。コンディショニングの不調の段階で、長胸神経麻痺の疑いがある検査を実施していたかもポイントとなります。

少なくとも野球選手の斜角筋や僧帽筋の発達具合を鑑みて、胸郭出口症候群の簡便な徒手検査は実施すべきであると考えます。

上記で紹介した首・肩の圧迫によって発生する痺れを確認します。

 

②鍼灸施術の際に患者状態を確認していたのか?

記事の内容によると複数回の施術を受けていた様子ですが、その間に選手から不快な痛みの訴えなどはなかったのでしょうか?

長胸神経は浅層を走行することや胸郭付近であるため「気胸:ききょう(肺に鍼を刺してしまうことによって発生する呼吸困難)」への配慮など、術者が施術に慎重になる部分でもあります。

また、神経繊維は「髄鞘:ずいしょう」と呼ばれる部分で覆われており、異物が髄鞘に近づく(もしくは傷つける)だけでも不快な違和感や痛みを生じます。

施術中にそのようなことがあれば、選手はトレーナーに対して訴えていたはずです。ましてや長期的となると訴えの回数は多かったのではないかと予測されます。

③何をもって原因を特定したのか?

鍼灸で使用される鍼は非常に細いです。一般的に使用されやすい3番鍼(直径0.20mm)を基準に前後を考えても、鍼を刺した鍼孔は目視することができません。

複数の医師らによって原因を特定したとありますが、一体どのようにして検証したのでしょうか。

鍼孔を特定することは容易ではありませんが、現状の技術であれば可能です。

現に鍼灸事故のひとつである「気胸」を検証する際に、専門機関での確認を行います。

今回、そういった情報がまだ開示されていないのか?または球団や医師らが独自に判断を下したのか真偽は不明です。

そういったアクシデントがあった際には、必ず検証として学術が立ち会いとなるはず(プロ野球という注目コンテンツであるならば必ず)ですが、公開質問状を提出していることから事態を把握していなかったように思います。

 

以上が私の大まかな疑問点ではありますが、質問状の回答や検証結果が分かるまで断言することはできません。

 

 

 

真偽のほどは不明でありますが、このような事態が起こった事に対して、鍼灸師としてのリスクマネジメントや施術対応をしっかりと鑑みる必要があると感じました。

事故が起こってからでは遅いのです。我々 施術者が国家資格保有者としての責務を十分に感じて社会貢献していく必要性があると感じました。

 

 

萬育堂薬房では2名の鍼灸師スタッフが所属しております。

今一度、『安心・安全』を第一に考えて患者様と向き合ってまいります。

***********************

萬育堂薬房

鍼灸師

志倉 敬章

530-0046 大阪府大阪市北区菅原町10-11ジーニス大阪105

TEL06-6311-5181

Mailinfo@banikudo.com

PCサイト:http://www.banikudo.com/

子宝サイト:http://kodakara.banikudo.com/

LINE : @banikudo

FBページ : https://www.facebook.com/banikudo

TwitterID : banikudo

***********************